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コラム
企業内で行う「情報セキュリティ教育」の実施方法とは?目的や手順を解説
顧客情報管理や企業内の情報周知など、現代の企業ではさまざまな業務がネットワーク上で機能的かつ効率的に行われています。
その一方で、サイバー攻撃被害や個人情報漏洩など、情報セキュリティ事故は年々増加しており、従業員への情報セキュリティ教育が重要視されています。
この記事では、企業における情報セキュリティ教育について、その目的や教育の手順、ポイントなどを分かりやすく解説します。
1.企業における情報セキュリティ教育の目的
従業員に対して研修を行うにあたり、情報セキュリティ教育とはどのようなものか、教育の目的や具体的な内容などを確認しておきましょう。
情報セキュリティ教育とは
情報セキュリティ教育とは、情報の取り扱いや管理方法、セキュリティ対策などに関する知識や対策方法を従業員へ周知することです。
近年、情報漏洩やサイバー攻撃などが増加しており、全従業員が情報セキュリティに対して高い意識を持ち、適切な行動を取ることが求められています。
従業員への情報セキュリティ教育は、企業の情報資産を守っていくうえで非常に重要なプロセスのひとつです。
情報セキュリティ教育の目的
情報セキュリティ教育を行う目的について、詳しく確認していきましょう。
情報管理における事故を未然に防ぐため
情報セキュリティ教育の主たる目的は、情報管理における事故を未然に防ぐことです。
個人情報漏洩などの事故は、企業の信頼低下を招くだけでなく、顧客や関係先への補償など、多くの被害をもたらす可能性があります。
情報の取り扱いや管理についての基本的なルールや正しい知識を身に付けることで、不注意や誤った操作による情報事故のリスクを軽減できます。
ネットリテラシーを高めるため
ネットリテラシーとは、ネット上での情報の取り扱いや適切に対応する能力を指します。
個人が気軽に情報を発信できる現代では、一従業員の投稿で企業が炎上してしまうことも少なくありません。
情報セキュリティ教育を通してインターネットのリスクを理解し、業務における情報管理だけでなく、日常的に安全に利用するためのスキルを学びます。
情報セキュリティの重要性を従業員が認識するため
従業員の情報セキュリティに対する意識の向上も、教育を行う重要な目的のひとつです。
被害が増えているサイバー攻撃や標的型攻撃メール、ヒューマンエラーによる情報漏洩など、他人事ではありません。
企業規模に関わらず事例は発生しているため、従業員一人ひとりが「リスクは身近に存在している」という認識を持ち、普段からアンテナを張って業務に取り組む組織づくりが必要です。
情報セキュリティ教育の内容
ここでは、一般的な情報セキュリティ教育の内容について、解説します。
なお、企業の規模や業種により必要な教育内容は異なるため、自社に適した教育を検討することが重要です。
個人情報の取り扱いや管理について
社員名簿や顧客情報などをはじめとする個人情報の取り扱いに関する注意点や、管理方法について学びます。
例えば、以下のような内容が挙げられます。
- ・情報の正しい保存・共有・廃棄の方法
- ・ID・パスワードの管理方法
- ・情報の社外持ち出しにおける注意点
- ・メールの誤送信防止
- ・添付ファイルの保護 など
情報管理の基礎知識を身に付け、操作誤りなどのヒューマンエラーによる事故を防ぎます。
サイバー攻撃やウイルス感染への対策
近年では、PC内のデータを暗号化し復号の対価に金銭を要求するランサムウェアや標的型攻撃メールなどのサイバー攻撃が増加しています。
情報処理推進機構が発表する「情報セキュリティ10大脅威 2024」でも、ランサムウェア被害は9年連続でランクイン。2021年度以降は、4年連続で1位になっています。
教育内容として、以下のような内容が挙げられます。
- ・ID・パスワードの管理や多要素認証の導入
- ・標的型攻撃メールの特徴
- ・サイト閲覧時の注意点
- ・ウィルス対策ソフトの導入(最新バージョンへのアップデート) など
企業としても従業員への注意喚起は必要不可欠であり、情報セキュリティ教育において需要が高い項目のひとつです。
情報セキュリティ事故の具体的な事例
ヒューマンエラーによる事故やランサムウェアによる被害など、実際に過去に起きた情報セキュリティ事故の事例から原因と対策を学びます。
事故によって発生した被害や損害賠償、企業価値に与える影響などを理解することで、情報セキュリティの重要性を認識します。
2.情報セキュリティ教育の手順
ここからは、従業員への情報セキュリティ教育をどのような流れで行うか、具体的な手順についてご紹介します。
1.情報セキュリティ教育の目標を設定する
まずは、情報セキュリティ教育における目標を設定しましょう。
社内のインシデント数を目標にするケースや、研修の受講率、研修後の理解度テストの点数を目標にするケースなど、企業によって目標はさまざまでしょう。
2.研修のテーマを決める
研修を通して身に付けてほしい知識やスキルを明確にし、学習のテーマを設定します。
身につけてほしい知識を洗い出す
従業員に身に付けてほしい知識をピックアップします。
例えば、情報の取り扱いやパスワードの管理方法などの一般的な内容から、業種による特殊な内容など、自社の業務内容に合わせることが重要です。
研修で学ぶテーマを決める
情報セキュリティといっても、上記でも述べているように内容やレベル感は多岐にわたります。一つの研修に詰め込むと、研修時間が長くなったり、内容を深堀りできない可能性があるため、ある程度テーマを分けて研修を実施することが望ましいでしょう。
3.教育の対象者を決定する
情報セキュリティ教育は、基本的に全従業員に行う必要があります。
PCを扱わない業務が中心の従業員であっても、社用スマホの利用やプライベートでのSNS利用など、トラブルの種は身近に存在するためです。
例えば、東京大学では2017年度から教職員や全学生を対象に、eラーニングを用いた情報セキュリティ教育が毎年実施され、未受講者は学内のWi-Fiを使用することができないようになっています。
受講が年に一度の必須条件となっていることからも、情報セキュリティ教育を重視していることが分かります。
企業においても、情報漏洩に関する一般的な知識やリスクなどは全従業員に教育するのが望ましいです。
加えて、部署や役職など必要に応じて、より専門的な学習を検討する必要があります。場合によっては、情報を共有する取引先や下請け企業なども対象になります。
4.教育を行う頻度やタイミングを決定する
情報セキュリティ教育は、1度きりでは十分な効果を得られません。
理由として、リスクや脅威を理解していながらも、日常の慣れにより情報セキュリティへの意識が低下してしまうことが挙げられます。
さらに、常に情報がアップデートされる分野であるため、新しい内容を学ぶ必要もあります。新入社員の入社や人事異動なども考慮し、定期的に研修を行うことが重要です。
5.研修の具体的な内容を決定する
テーマと対象者をもとに、研修の具体的な内容を決めていきます。
例えば、標的型攻撃メールをテーマとした研修を実施する場合は、以下のような内容が考えられます。
- ・標的型攻撃メールの概要
- ・実際のメールと被害事例
- ・不審メールのチェックポイント
- ・不審メールが届いた際の対処法 など
▼i-netschool(アイネットスクール)で提供している教材のカリキュラム例
6.研修方法を選定し実施する
研修方法を決め、実際に教育を行います。
教育の効果を最大化するためには、企業の規模や学習する内容などに応じて、適した方法で行うことが大切です。
集合型研修
集合型研修は、教育の対象者を一ヶ所に集めて講師による講義を行う研修スタイルです。
直接のコミュニケーションが取れるため受講者の反応が分かりやすく、質疑応答がスムーズにできるメリットがあります。
オンライン研修
ZOOM等を活用し、リアルタイムで講師と受講者が同時接続して研修を行うスタイルのほか、あらかじめ録画している動画などを閲覧して学習することもできます。
eラーニング
eラーニングはオンライン研修のひとつで、インターネットを活用した学習方法です。
対応デバイスとインターネット環境があれば、場所や時間を問わずに学習に取り組めます。従来の集合研修より効率的に研修を行えるため、近年需要の高まっている研修方法です。
サービス提供会社によってさまざまな教育コンテンツが展開されており、情報セキュリティに関するコンテンツ(講座)も多く提供されています。
eラーニングでの研修は、下記のようなメリットが挙げられます。
- ・講師や受講者のスケジュール調整が不要
- ・研修担当の負担が軽減される
- ・受講者は好きな時間に学習ができる
管理側も受講者側も効率よく研修を進められるだけでなく、質の高い教材で学べるというメリットもeラーニングが選ばれている理由です。
7.研修の効果を測定する
研修後には、教育の目標に到達しているか、研修の効果を測定しましょう。
テストを行う
従業員の理解度を測定するために、テストを行います。研修の効果を可視化するにあたり、テストは重要な判断材料になります。情報セキュリティに関する知識の定着を確認するテストのほか、サイバー攻撃への対処や不審なメールの見分けなど、実践的な内容もチェックしたい項目です。
設定した目標や合格基準に満たない従業員がいた場合は、合格基準を満たすまで取り組んでもらうなどの対応が必要です。
また、情報セキュリティ教育を継続的に充実させていくためには、テスト結果を基に研修内容の改善を図る必要があります。簡単にパスできるようなテストではなく、学習内容の理解度を正しく測定できるテストを実施することが重要です。
対象者にアンケートをとる
対象者へのアンケートも効果的です。情報セキュリティ教育を通して学んだこと、意識の変化などを調査します。
また、分かりにくかった点やより詳しく学びたい内容などのフィードバックを収集し、研修の改善に役立てましょう。
8.研修内容を見直す
テストやアンケートの結果を基に、研修内容の見直しを行います。
学習効果を実測したテストと受講者の声を反映させることで、より効果の高い研修への改善が期待できます。
定期的に見直しをする
受講者の理解度が低い項目の学習を強化するほか、新しいサイバー攻撃の手口や事故の事例など、情報を更新していく必要があります。
情報管理に関する事故は年々増加しており、サイバー攻撃もより複雑化しています。
情報セキュリティ教育を成功させるには、常に内容をアップデートして最新の情報に触れることが重要です。
情報の管理や保持は定期的にチェックが必要
研修で学習するだけでなく、研修した内容がきちんと社内で浸透しているかを定期的にチェックしましょう。
情報セキュリティ教育の結果として重要なのは、テストで高得点を獲得することではありません。
普段の業務で正しい情報管理が行われているか、インシデントは発生していないか、などの教育の成果を確認できるとよいでしょう。
3.情報セキュリティ教育のポイント
情報セキュリティは、新しい脅威や巧妙な手口が次々と現れることから、常に情報がアップデートされる分野です。どの企業も、従業員への教育や自社セキュリティの強化などに力を入れていますが、攻撃の手口もレベルが上がり、被害を受ける企業が後を絶ちません。
2024年には、教育関連の大手情報通信会社がランサムウェアの被害に遭い、大規模なサービス停止と個人情報の流出が確認されました。
巧妙化していくサイバー攻撃や新たなリスクに対応していくためには、情報を正しくアップデートして教育内容に落とし込んでいく必要があります。社内で対応できるのがベストですが、普段の業務の片手間に情報収集を行い、教育内容に随時反映するのは、意外に手間がかかる作業です。
情報セキュリティ教育を専門に扱う業者やeラーニング会社が提供する教材コンテンツであれば、基本的には最新の情報に対応した教材になっているため、質の高い教育が可能です。社内リソースが足りない場合は、外部サービスの利用を上手く利用して研修を実施しましょう。
i-netschool(アイネットスクール)では、eラーニング講座「情報セキュリティコース」を提供しています。情報セキュリティや情報漏洩に対する意識を高め、日常業務における注意点やサイバー攻撃への対策などを学べます。
ショートドラマやアニメーションを用いて分かりやすく解説しており、累計受講者数66万人以上の人気コースです。
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4.まとめ
この記事では、情報セキュリティ教育の目的や手順について解説しました。
情報セキュリティ教育は、企業の情報資産を守りサイバー攻撃や情報漏洩のリスクを回避するために、不可欠な取り組みです。
教育の目的を明確にし、適切な手順で研修を実施することで、企業全体のセキュリティレベル向上を目指しましょう。
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i-netschoolはeラーニング事業歴20年以上。これまでのノウハウをもとに、eラーニングに関するお役立ち情報を発信しています。